言うことを聞かなければ言い続ける

「いくら言っても言うことを聞いてくれない人がいて困っています。どうしたら良いでしょうか。」

「その人にはきちんと言っていますか?」

「もちろん言ってます。」

「本当に言っていますか?今も前も変わらずに、言い続けていますか?」

「・・・最近は言ってないかもしれません。」

能力はあるし成果もあげている、けれどもわがままで口が悪い、その人がイヤで会社を辞める人も出ている。そんな中堅社員を抱えて悩んでいるクライアント企業がいました。私がとある先生にそのことを相談すると 「言っても聞かないと言いながら、実は言っていないのではないですか?言わなくなってしまっているのではないですか?」 と言うのです。確かにその通り。言っても聞かないし変わらないから最近は言うことを止めていた、半ば諦めていたのです。

同じような状況のリーダーは少なくないのではないでしょうか。厳しいことを言うと怪訝な顔をしたりふて腐れた態度を取ったりする部下、なかには反抗してくる部下もいるでしょう。そうすると、できるだけそのような部下とは距離を置きたくなります。自分にとって言いやすい部下にだけ言うようになり、言うべき部下には言うべきことを段々と言わなくなってしまうのです。また、リーダーには多くの仕事があります。中小企業においてはリーダーの多くがプレイングマネージャーであり、部下のマネジメントだけでなく自らの仕事も抱えています。そうすると、言うことを聞かない部下に対する指導という非効率な役割は避けたくなってしまうものです。

しかしながら、リーダーは部下を導く、ときには相手を変えることが仕事です。言うことを聞かずに傍若無人な部下を放置することは、リーダーとしての職務放棄とも言えます。また、言うことを聞かない部下の指導に効率やスピードを求めてはなりません。言うことを聞かない部下に対する指導ほど非効率なものはないからです。なにか魔法の杖があればいいですが、部下は人間であり意思があるからこそ、簡単に解決する問題でもなければ、簡単にうまくいく方法もありません。だからこそ、覚悟をもって部下に立ち向かわなければなりません。

私は前職時代、当時の代表から 「子どもが挨拶をしなければ挨拶をするようになるまで言い続けなきゃならない。家にあがるときに靴を揃えなければ、自分で靴を揃えるようになるまで言い続けるしかない。社員教育も一緒。言い続けることが大事なんだよ。」 と教わりました。

「今日こそは分かってくれるかもしれない」「今日こそは変わるかもしれない」と信じ、相手が変わるまで言い続ける。相手が理解し、変革するまで関わり続ける。それが言うことを聞かない部下に対する指導法であり、リーダーに求められる覚悟です。 冒頭のクライアント企業では、経営陣が 「彼は変わった、成長した」 と認めるに至るまで3年かかりました。これは当時の上司が覚悟を持って粘り強く本人への指導にあたった結果です。極論を言えば、そのような覚悟を持ち得ない人にはリーダーを務めさせるべきではありません。とは言え、人材が潤沢ではない中小企業においてはそれは現実的ではないかもしれません。とすれば、現状のリーダーにその覚悟を持たせることが必要です。ご興味のある方はお問い合わせくださいませ。

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