企業と人材の変化・成長を後押しするリスキリング

最近耳にすることの多いリスキリング。リスキリングとは 「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」 とされています。

※経済産業省「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」  https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/002.html

リスキリングという言葉が注目され始めたのは2018年のダボス会議で「リスキル革命」が提唱されてからといわれていますが、2022年10月、岸田首相が所信表明演説にてリスキリング支援に5年間で1兆円を投じると表明したことから一層注目を浴びることになりました。

先日、実際にリスキリングを経験した方の講演に参加する機会がありました。講師は現在はエンジニアですが、元々は派遣社員。受付事務として派遣されていた会社で正社員登用が決まり、その後は経理業務などを担っていたそうですが、その会社が新規事業としてシステム開発事業を立ち上げた際、個人の希望と会社の後押しもあって、全くの未経験ながらもエンジニアへ職種変更。現在は顧客のシステム開発を担うほどご活躍されているとのことでした。

この事例はまさにリスキリングのモデルケースとも言えるでしょう。一方で、多くの中小企業でリスキリングの推進には様々な困難があることも事実と思います。経済産業省の「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」では以下のように書かれています。

・会社が期待するほどにリスキルが進捗しない主な要因として、社員が現職での多忙さを理由にリスキルの優先順位を下げてしまうことが挙げられる。また、社員が、スキル転換に伴うキャリアの変化に対して不安を覚えることも、リスキルが進まない原因として考えられる。
・組織に不足するスキル・専門性の獲得を社員に促すに当たっては、その重要性を社員に丁寧に説明するだけではなく、そのリスキルに十分なインセンティブが働くよう配慮する必要がある。
・そのため、社員に対して、リスキル後に期待される処遇や報酬について可能な限り説明することが重要である。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf

このようなことの具体策としては

  • 社員にとってのリスキリングの優先順位が高まるよう、リスキリングの必要性や期待される成果を社員に理解してもらい、リスキリング後に社員に期待するポジションやミッションを明示する。
  • 現職で責任を果たしながらリスキリングを行う社員の負担に鑑み、リスキリング後に期待される報酬水準を可能な限り明確にする。
  • 社員がリスキリングに取り組む際に共通の目標をもって取り組む同僚がいること。社員が互いに学び合って、理解を深める場を設けること。

といったことなどが必要と同レポートでは触れられています。

国がリスキリングを推進する背景にはDX(デジタルトランスフォーメーション)を担うデジタル人材の不足があり、リスキリングにおいてはデジタルスキルが主流であることは間違いないでしょうが、より付加価値が高い仕事をこなせるように今のスキルには足りない部分を学習するのがリスキリングであり、デジタルスキル以外にも営業担当者が人材開発を学ぶ/学ばせる、事務員が英語を覚える/覚えさせることなどもリスキリングです。ビジネスや雇用を取り巻く環境が急速に変化している環境下において、内部人材にリスキリングを行い必要なスキルを身につけてもらうことは、企業と人材の変化・成長を後押しするものとなるはずです。

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