働きやすさ ≠ 働きがい

Kさんは、虫が大の苦手です。春になりだんだんとあたたかくなってきたため、職場では窓を開ける機会が多くなりました。「あぁ、風が通って気持ちいいなぁ」と思いながらKさんは仕事をしていましたが、「・・・ん?虫がいる・・・」と、社内で多くの虫が飛び回っていることに気が付きました。Kさんの近くの窓を見てみると、網戸が大きく壊れていて、そこから虫が侵入していたのです。Kさんは上司に言いました。
Kさん 「網戸を直してください。」
上司  「うん。そのうち直しとくよ。」
Kさん 「じゃあ、せめてそれまで窓を閉めてエアコンかけていいですか。」
上司  「まだそこまで暑くないでしょ。エアコンの風が苦手な人もいるし。直しておくからちょっと待ってよ。」
2週間後・・・網戸はまだそのままです。夕方になると、虫の数はさらに多くなり、時折大きな虫も侵入してきます。「無理!なんとかしてくれ!」とKさんは不満です。1ヶ月後、業者が来てようやく網戸が直りました。「あぁ。良かったぁ。」と喜ぶKさん。「よし!仕事を頑張ろう」 ・・・とはならず、Kさんは満足して帰っていきました。

「働きやすさ」と「働きがい」はイコールではありません。社員が働きやすいと感じていなければそれは改善する必要があるでしょうが、働きやすさを追求したとて、それが社員の働きがいに繋がるわけではありません。上記の事例はやや稚拙ではありますが、そのことを表した事例です。

社員に働きやすさを感じさせるものは、例えば会社の方針や管理監督の在り方、給与、対人関係、作業環境などです。繰り返しにはなりますが、社員が不満を抱えているのであればそれを改善しないと当然社員のなかで不満はどんどん募っていきますが、一方で、それを改善したとしてもあくまでも抱えていた不満が解消されるだけで、社員に働きがいはもたらしません。社員に働きがいをもたらすものは、仕事ができたときの達成感や成果を他人に認めてもらうこと、仕事そのものの面白さ、昇進や責任が大きくなること、仕事を通じた成長の可能性などであり、働きやすさと働きがいを感じる要素は別物なのです。

働きがいをもたらすためには「職務の充実化」を図ることが1つの手段です。職務充実とはこれまでの職務に管理的な要素、管理プロセスで言えば「プラン」と「チェック」の内容を加えることです。ただ命令されて仕事をするのではなく、社員自身が職務を管理をすることは自己実現欲求を満足させることに繋がり、社員のやる気を引き出すことができます。職務充実と似た言葉に職務拡大がありますが、職務充実が管理というこれまでよりも難しい要素を加えて垂直的に拡大するのに対し、職務拡大は難しさがこれまでと同程度の内容を加えて種類を増やす、つまり水平的に拡大するところに違いがあります。働きがいをもたらすためには職務拡大ではなく職務充実を図る必要があります。

最近の若い社員は会社に不満は無いが不安がある、と聞きます。上司や先輩は皆優しくてあまり厳しいことを言われない、残業も少なくなった、給与も悪くはない、でも、自分はこのままこの会社にいて成長できるのだろうか、という”不安”を抱えているというのです。優秀な人材を離職させないためにも、給料や福利厚生、職場環境だけでなく、自社だからこその働きがいを社員に与えることが重要です。

お問い合わせはこちら

関連記事

  1. 人間は複雑微妙であるからこそ人材育成は理解・尊重・直接指導を

  2. ボスではなくリーダーであれ

  3. ホウレンソウという当たり前のことができるのは当たり前ではない

  4. MQ会計_202020

    とっても簡単!MQ会計!!

  5. 人を動かす基盤は人間的影響力

  6. 新入社員教育と将来像の明示

  7. 心理的安全性を高めて組織を成長させる

  8. 不満の解消と個別の動機づけ

最近の記事 おすすめ記事
  1. 2023.12.29

    年末のご挨拶
PAGE TOP