事業承継が進まない本当の理由

事業承継は、日々経営に向き合っておられる方にとってつい後回しになりがちなテーマかもしれません。「自分は80歳まで経営を続ける」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。それも一つの選択です。しかし、我々が現場で多く拝見するのは、「65歳になったら」「70歳になったら譲る」とあらかじめ決めていたにもかかわらず、いざその年齢を迎えても実際にはバトンタッチが進まないケースです。実際に「あと3年」「もう少し様子を見てから」と考えているうちに、気が付けば5年、10年と時間が経過してしまうことも珍しくありません。

なぜ事業承継は進まないのか

その背景には、「後継者はいるが任せるには不安がある」「本人は継ぐ意思があるが経営の全体像を掴みきれていない」「取引先や金融機関との関係を十分に引き継げていない」「社内における求心力や信頼が十分に育っていない」といったことがあるようです。こうした状態のまま時間だけが経過し、結果として「譲るタイミングを逃してしまう」ことが起こります。また、後継者の年齢が上がるにつれて、「本当にこのタイミングで良いのか」という迷いが強くなるケースも見受けられます。

譲ったつもりが生む停滞

そしてもう一つ、少なくないのが「譲ったはずなのに、実質的に譲れていない」というケースです。一度社長を退いたものの、後継者の判断に対してつい口を出してしまう。会議の場で補足するつもりが主導してしまったり、取引先との打ち合わせで最終的な判断を自ら下してしまったりと、日常のささいな場面でも関与する場面が増えていきます。さらに踏み込んでしまうと、後継者が下した意思決定を後から覆し、改めて自ら指示を出してしまうケースも見受けられます。この状態が続くと、組織はどちらの判断に従うべきか分からなくなり、後継者の求心力は徐々に失われていきます。結果として、重要な意思決定ほど後継者に上がらなくなり、最終的には形だけの承継になってしまうこともあります。そして、その延長線上で起こり得るのが、「このままではうまくいかないのではないか」「もっとこうした方が良いのではないか」という思いから、再び自らが前面に立とうとするケースです。それは決して悪意ではなく、長年会社を支えてきた経営者としての責任感や愛情から来るものです。しかしながら、その“愛”が結果として承継を停滞させ、組織の成長機会を奪ってしまうことも少なくありません。

承継は「任せきれるか」で決まる

親族内承継は、最も自然で理想的な形と考えられることが多いですが、実際には時間をかけても思い描いた通りに進まないケースも少なくありません。重要なのは、「いつ譲るか」ではなく、「譲った後に機能する体制がつくれているか」です。例えば、後継者が金融機関や主要取引先と直接関係を築いているか、社長不在でも意思決定が回る体制が整っているか、社内で後継者への信頼が確立されているか、経営に関する最終判断が後継者に集約されているか。これらが整っていない場合、承継は手続きだけ進み、実態は進んでいない可能性があります。

いまが最も選択肢の多いタイミング

事業承継は、少しずつ「任せる」「任せきる」を進めていくものです。準備を始めるのが早いほど選択肢は広がり、時間に余裕がある中で最適な方法を選ぶことができます。反対に、時間が限られるほど選択肢は狭まっていきます。いまこのタイミングこそが、最も選択肢の多い時期と言えます。

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