人間は複雑微妙であるからこそ人材育成は理解・尊重・直接指導を

とある高級アパレル商材を扱う店舗。
店長をはじめ明るいスタッフが多く、笑顔と会話が絶えず、常連客からは「店の雰囲気が良い」「店員との距離が近く、自分も自然体でいられる」と評判。

しかしながら、ここでは赤字が続いていました。

営業部長は「仲が良いだけの馴れ合い集団」と指摘し、「収益を上げられなければ人を減らさなければダメだ」と人員削減を提示します。
しかし、従業員を第一に考えるこの店長は「人を減らすことだけは絶対にしたくない」と断固として拒絶。

そこで、営業部長と店長との話し合いの末、顧客分析、買上事例の共有、顧客へのアプローチ方法などをテーマにした研修会を強化していくことを決めます。

すると、ここで店長の「場づくり力」が存分に機能することに。
「場づくり力」とはいわば場を和ませ、投げかけや質問をし、対話を促進するような雰囲気づくりをすること。
その顧客はなぜその金額のその商品を買ってくれたのか、自分たちのおもてなしのどこが良かったのか、店長は担当スタッフにひたすら問いかけ、本人に買上理由を考えさせます。顧客がその商品を買った理由は様々ですが、その買上理由を必ず担当者の取り組みや店舗側の努力に結びつけます。
時には笑いを誘い、拍手をして場を盛り上げ、議論を誘発し、アドバイスや疑問の投げかけをし、気づきを促進。

次第にスタッフたちは「自分の行動・努力がお客様の購入に繋がった」と自信を持つようになり、販売手法に再現性が生まれ、個々人の意識変化に繋がっていきます。
あるスタッフは「研修会を通じて皆の意識が変わった、売りたいと思えるようになった」と述べていました。

コロナ禍の夏、この店舗は昨対比200~300%の売上で推移し、2020年9月には過去最高売上を達成。全国にある店舗のなかで注目店舗として脚光を浴び、この店舗をモデルケースにした社内研修会が実施されます。

この店舗の成功要因の1つは属人的なノウハウや技術など(暗黙知)を吸収・共有化できる仕組み(研修会)を構築し、継続したこと。これが組織力の向上と個々人の意識向上・スキルアップに繋がりました。
もう1つは、店長の特性を弱点として突き(原動力に変え)、それを長所としても活かせたことでしょう。
「従業員満足が第一、従業員のために店をやっている」とまで言い切るこの店長にとって、人員削減まで突き付けられたことは「居心地がいいだけじゃダメなんだ、従業員を守りたい」という強い動機になりました。そして持ち前のスキルと求心力でスタッフたちを牽引し、黒字化を実現します。
店長の考えや性格を熟知していた営業部長の(マネジメント力ではなく)リーダーシップ力を発揮させようという狙いがうまくいった事例です。

人間には必ず個人差があり、機械とは異なりインプットが同じでもアウトプットは異なるのが通常です。
ゆえに人材育成には「一般的な人間性(心理学や行動理論に基づく人間の一般特性)」の理解に加え、「一人ひとりの個性」の理解・尊重が必要であり、個別指導と粘り強い個別アプローチが不可欠です。

人間は複雑微妙であって、人間性の理解・尊重ということは果てしなく、かつ、至難の道である。リーダーは、関係知識の習得に努めることも必要であるが、それ以上に熱意と愛情をもって、できる限り、部下と直接接し、理解と指導に取り組む実践行為が特に重要である。
出典:統率の参考

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