アメとムチに頼らないリーダーシップの在り方

アメとムチは一時的に成果を上げる手法として知られていますが、それだけでは持続可能で効果的なリーダーシップとは言えません。人間は家畜や機械ではなく、意思を持ち成長する存在です。そのため、一般的な人間性(心理学や性格分析など)を理解・尊重し、一人ひとりの個性を活かすリーダーシップが求められます。

指示を出す際のスタンス

部下に指示を出したとき、リーダーとして以下のどちらのスタンスで考えるべきでしょうか?

A:「自分が言った通りにやっているはず」「伝わっているはず」
B:「自分が言った通りにはやっていないだろう」「伝わっていないだろう」

私は以前までAのスタンスでした。しかし、Aのスタンスでは、指示が正しく実行されていないときに苛立ちを覚えることが多くなります。これに対し、Bのスタンスを取ると、「伝わっていない」ことを前提とするため、ストレスを抱えることも少なく、確認と修正を徹底することができます。特に、年齢・性別・国籍・経歴といった背景が異なる場合には、「自分にとって分かりやすい説明=相手にとって分かりやすい説明」ではないことを常に意識すべきです。そのため、確認(相手が理解しているかどうかを丁寧に確かめること)と修正(必要に応じて説明や指示を調整すること)が重要になります。業務終了後に「何をやっているんだ!」と叱責するリーダーがいますが、それは事前の確認や修正を怠ったリーダー自身の責任とも言えます。リーダーは「言いっ放し」にするのではなく、確認と修正を繰り返し、部下と連携することが求められるのです。

画一的な対応を避ける

「パートだから」「女性だから」と属性で一括りにして対応することは避けるべきです。機械やコンピュータであれば、同じインプットをすれば同じアウトプットが得られますが、人間の場合はインプットが同じでもアウトプットが異なるのが通常です。だからこそ、リーダーには個別指導の役割と責任があります。一人ひとりの状況や特性を踏まえ、適切な対応をすることで、その人の力を引き出し、成長を促すことができます。

人を見極める能力を養う

リーダーにとって、人を見極める能力は不可欠です。リーダーは仕事を自分以外の人に任せていかなければなりません。任せる人を間違えると仕事は進まず、場合によっては信用を失うこともあります。任せる人が正しければ、仕事は円滑に進みます。リーダー以上にうまく進めてもらうことも可能です。「何をするのか」が正しくても「誰に任せるか」を間違えると期待する成果は出ません。だからこそ、人を見極める能力がリーダーには求められるのです。
人を見極める際には、言葉ではなく行動で見極めることがポイントです。言葉はごまかしが利きますが、行動はごまかしが利きにくいものであるからです。そのためには一貫性と継続性を見ることであり、具体的には短期間で態度が変わらないか、目立たない日常の中でどれだけ安定した行動を取れているか、目標に向かう粘り強さがあるかなどを見ることが重要です。

アメとムチに頼るリーダーシップは、短期的な成果は得られるかもしれませんが、長期的な信頼や成長を生むことはできません。自社の管理職が、一人ひとりの個性を理解し尊重する姿勢を持ち、適切な指導、確認、修正、そして人材の見極めをすることできていれば、組織全体として持続可能で効果的なリーダーシップが実現できます。少しでもご参考になれば幸いです。

関連記事

  1. 人間は複雑微妙であるからこそ人材育成は理解・尊重・直接指導を

  2. 新入社員の育成を疎かにしてはならない

  3. リーダーは自分のスタイルをどこまで柔軟に変えられるか

  4. 思い込みを手放し他者の声に耳を傾ける

  5. ホウレンソウという当たり前のことができるのは当たり前ではない

  6. 欠乏感で集中力を高め仕事の質を上げる

  7. 部下とのより良い面談のために

  8. 不満の解消と個別の動機づけ

最近の記事 おすすめ記事
PAGE TOP