部下へのコメントを効果的なものにするには

3月決算の会社においては間もなく上半期が終わるところであり、人事評価制度のある会社であれば面談を迎える時期でしょう。人事評価の結果は伝え方ひとつで本人の受け止め方・理解度・納得性に差が出てしまうもので、上司によるコメントが適切でない場合、人事評価の効果が半減するばかりでなく、部下の意欲低下をもたらします。一方、適切なコメントは本人に課題を認識させ、意欲を向上させ、課題解決の動機づけとなります。部下へのコメントを効果的なものにするには、以下のようなことが挙げられます。

①価値判定しない

人事評価は、上司が実際に観察した事実に基づき、それぞれの評価要素について価値判定を行うものです。一方で、上司にとって価値判定はたいへん難しい行為であることも事実です。部下の行動が実に正しいものであるかどうかを見抜く必要があり、部下のわずかな側面だけを見て評価を下すことは真に正しい評価とは言うことができないからです。また、正しい評価をしない上司に対しては部下の反感が高まってしまい、動機付けどころか部下のやる気を失わせてしまうことすらあります。そこで、コメントの際には「褒めること(価値判定行為)」ではなく「感謝すること(状況判断行為)」を心掛けます。本人が期待を上回っていた事柄について、上司として、リーダーとして、職場の一員として、「おかげで助かった」「ありがたかった」「嬉しかった」と謝意を示し、今後も継続するよう伝えます。では、期待を下回っていた点についてはどうか。この場合も同様に謝意を示します。まず、社員として日頃から一定の役割を果たしてくれていることに感謝しつつ、「いつも◯◯してくれて助かっていますが、この点については十分に気をつけてください。」「…この点だけは注意して欲しい」などのように今後の改善事項を提示します。

②事実・見解・助言に分ける

「所定労働時間を超えて仕事をしていた」という事実について、「責任感が強い」という見解を示すこともできれば、「作業が遅い」という見解を示すこともできます。本当の意味で正しい見解を示すためには、その事実に至った理由や経緯の一部始終を把握していなければならず、難しい判断を迫られます。ここで大切なことは、正しい見解を示すことではありません。この事実が「あるべき姿」かどうか上司としての見解を示して、もし「あるべき姿」でない場合は問題解決に向けた助言をします。

③バーナム効果の活用

なぜ星座占いは「当たっている」と感じるのでしょうか。誰にでも該当するような抽象的で一般的な記述であっても、読み手が「自分宛てのもの」と受け止めたとき、信憑性が高いと感じるものだからです。「相手がノーと言うときは、あまり強引な態度はとらず違うアプローチを検討してみてください。」「重要な決断をするときは、なるべく多くの人から意見を聴いた方が無難です。」「過去の体験から慎重になりすぎです。積極的になることも忘れないでください。」「気になることは調べてみましょう。今までと見方が変わります。」。これらは星座占いの運勢として提示されていた文面をピックアップしたものですが、いずれも有益かつ貴重なアドバイスを含んでいます。職務を遂行する上で共通かつ基本となる一般的なアドバイス事項があれば、社員が前向きに自身の能力向上や職務の改善に取り組むよう促します。

人事評価は、被評価者である部下があるべき姿に向かって新たな行動を開始するよう、本人に対して心理的な影響を及ぼすことです。そのためには、部下が感情的に受け入れやすいように、上記のポイントを押さえながら愛情をもって問題点や課題を伝えることが大切です。少しでも参考になれば幸いです。

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