部下の気づきを促すコーチング・スキル

夏の甲子園で早稲田実業に劇的勝利を収めた大社高校。惜しくも準々決勝で敗れたものの、石飛監督は「子どもたちが本当に主体的に取り組んで、自分達の課題に向き合った結果」と言っていました。
自分の考えによって自身が取り組むべき目標と課題を決め、そのために何をすべきかを認識し、主体的に行動する。
その手助けをするのがコーチングです。
コーチはプレーヤーに対して、何かを教えたり、指示や命令をするのではなく、代わりに、本人に気づきを促すような質問をします。
コーチングは大変有名なものではありますが、ここでは部下の気づきを促す効果的な質問の仕方など、コーチング・スキルの一部について紹介します。

①I(アイ)メッセージ

自分が何の苦労もなく作り上げた企画書に対して、「素晴らしい!」と言われても、あまり心に響かないものです。ところが、「この企画書を見て、とても参考になり、助かった。」と言われたらいかがでしょうか。前者の「素晴らしい!」は、YOUメッセージ、つまり「あなたは◯◯だ」という決めつけになります。後者の「参考になった」「助かった」はIメッセージ、つまり「私は◯◯だ」であり、私の見解や感想に過ぎず、Iメッセージのほうが相手に受け入れられやすいと言われています。

②オープン・クエスチョン

「今の仕事は好きですか?」と聞かれたら選択肢は「はい」「いいえ」「どちらでもない」のいずれかしかありません。ところが、「今の仕事のどんなところが好きですか?」と聞かれたらいかがでしょうか。前者はクローズド・クエスチョンと呼ばれ、情報の収集や確認などに使われます。後者はオープン・クエスチョンと呼ばれ、本人も気づいていないアイディアや新しい視点を引き出すことに使われます。

③パワフル・クエスチョン

「あなたにとって仕事って何?」というような、ハッとさせられ、深く考えさせられる質問は、物事の本質を引き出し、大切なことを呼び覚ましてくれます。質問はシンプルであるほど大きな気づきを促しやすく、「それで、あなたはどうしたいのですか?」という質問はそのシンプルさゆえに部下の自発性を引き出すのに効果的です。

④未来志向・解決志向の質問

「なぜ失敗した?」「どうしてできなかったの?」という質問を投げかけられたら部下はどんな気持ちになるでしょうか。これらは質問という形態をとってはいますが、理由を求められているというよりも、むしろ「問い詰められている」「非難されている」という印象が強くなります。過去や問題に焦点をあてるのではなく、「どうしたら成功した(する)と思う?」「どうすればできた(できる)と思う?」など、未来と可能性に焦点をあてた質問にします。

コーチングでは考えるのは部下であり、部下が話しながら頭の中で考えを整理することができるよう、上司は話しやすい環境を整え、質問をして、まとめ、感じたことを伝える役割を担います。しかし、部下が詰まってしまい、限られた時間の中でなかなかアイディアが出てこないこともあるでしょう。あるいは「ここはアドバイスした方が良さそうだな」と上司が判断することもあるでしょう。
その時は、上司からの「提案」を「質問」として投げかけます。
例えば「うちの部署で一番詳しいAさんに相談するといい。」と提案するのではなく、「うちの部署で一番詳しい人は誰?」「彼(彼女)に相談したら何て言われると思う?」などと質問します。
大切なことは、上司の助言や提案を受け入れる際に「自分で吟味して選択したのだ」と本人に思わせることです。つまり、部下の自発性を尊重することなのです。
少しでも参考になれば幸いです。

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