“まさか”に備えた体制づくりを

「あそこの社長は何歳になったんだ?…71歳か。いつまで続ける気なんだろうな」

このような会話をしばしば耳にします。確かに「65歳になったら辞める」と公言していた社長が、65歳を過ぎた今もなお社長としてバリバリ活躍されているケースが結構あります。しかしながら個人的には、本人の気力と体力が続く限りは社長を辞めなくてもいいのではないか、杓子定規に65、70歳とリミットを設けるのではなく、ご自身が心の底から「あとは託したい」と思えるときまで社長を続けてもいいのではないかと最近は思うのです。

ただそれには、事業承継に伴う課題を先送りせず、いつでも経営を後継者に託せるよう体制を整えておくということが必要不可欠です。

事業承継に伴う課題には、後継者の選定と教育、税負担対策、経営権の分散防止、事業承継後の資金繰り、債務や個人保証への対応など様々なものがあり、それぞれ専門家によるサポートが求められます。

私の守備範囲に関して言えば、『親族内承継』または『社内承継』の場合には、社長と後継者の間の以心伝心に頼るのではなく、綿密なコミュニケーションを取りながら会社の理念や社長の想いを伝承することが重要と考えています。後継者としての育成や取引先・従業員との信頼構築も、”なんとなく”ではなく意図的に進める必要があります。状況にも依りますが、これには5~10年を要するでしょう。『第三者承継(M&A)』を選択する場合には譲受先さえ見つかれば比較的短期間での事業承継が可能ですが、それでも1年程度、M&A後に社長が一定期間関与することも含めれば、やはり3年程度は必要でしょう。

人生には”上り坂”、”下り坂”、そして “まさか” の3つの坂があります。今まで後継者を育成してこなかったことから、社長の死後、好調だった業績が一転してしまった会社があります。夫婦で株式を所有し、社長が亡くなってからは奥様が代表権を有し会社を経営することになったものの、今まで経営に携わってこなかったことから、結局は”不本意にも”第三者へ株式を譲渡した会社があります。いずれの会社も社長は急逝でした。”まさか” に直面したわけです。

50歳近くで自身の健康を不安視されている社長がいらっしゃいました。今まで大病を患ったことはないものの、万が一にも自分が倒れては事業が立ちいかなくなるため、早いうちからあらゆる選択肢を検討しておきたいとのことでした。周囲からは「心配し過ぎだ」「投げ出すのか」と言われることもあったそうです。過度に恐れる必要は無いでしょうが、”まさか” に備え、従業員や取引先に迷惑をかけないよう今のうちから策を打っておくこの社長を私は臆病だとは思いません。経営者としてとても強い責任感をお持ちの方だなと感じました。

事業承継の準備はとにかく早めにスタートすることです。事業を承継できる体制を早い段階で整えることで、会社の業績、市場の動向を踏まえたベストのタイミングで事業承継を実行に移せます。

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